連合環境Information

「第102回ILO総会(持続可能な開発、ディーセント・ワーク及びグリーンジョブ委員会)」参加報告

2013年7月26日

 

 

第102回ILO総会
 (持続可能な開発、ディーセント・ワーク及びグリーンジョブ委員会)」の概要

自然環境の劣化、気候変動などを背景とする、低炭素社会及び持続可能な成長への移行が、ますます労働の分野に影響を与えている。このことに対し、今後、企業や労働市場の対応・適応が求められていくことは間違いないが、環境的にも持続可能な経済という目標は、労働分野から積極的な貢献がなければ達成されるものではない。

このような認識のもと、第102回ILO総会では、①持続可能な環境保全の達成と、②すべての人々にとってのディーセント・ワークの展望を具体化することを、密接に連鎖する喫緊な課題と位置づけ、課題解決に向けた一般討議が行われた。

6月19日には、政労使三者構成の委員会の結論を採択し、よりグリーンな経済への公正な移行の達成に向けた政労使共通のビジョンと主要な指導原則に関するILO加盟国政労使の初の合意が行われた。

 

 

1.委員会の構成
  • 「持続可能な開発、ディーセント・ワーク及びグリーンジョブ委員会」は、6月5日に174名の正委員(政府:81名、使用者:32名、労働者:61名)をもって構成され、以降17日まで計9回の会合を開催し、結論案を取りまとめた。委員会の議長団の構成は以下の通り。
    • 議長:アブダルマームッド・アブダルハレーム・モハマッド(スーダン)
    • 副議長(労働者代表):ヘラルド・マルチネス(アルゼンチン)
    • 副議長(使用者代表):ブレンダ・カスバート(ジャマイカ)
  • わが国の労働者委員は、菅家功連合副事務局長(正委員)、福井直幹連合社会政策局部長(副委員)が務めた。

 

2.委員会の経過
  • 6月5~7日の委員会においては、ILO事務局作成の報告書「持続可能な開発、ディーセント・ワーク及びグリーンジョブ」に示された、以下の論点に沿って討議を行った。

①  現在の主な環境問題が及ぼす労働分野への影響

②  持続可能な環境保全に資するディーセント・ワークを促進する機会

③  環境保全に資する政策の実施により労働分野が直面する懸念

④  過去の労働移動からの教訓と、持続可能な開発への移行に伴う新たな影響

⑤  持続可能な開発への移行に伴う、労働分野への影響の最小化のための政策

⑥  ILOおよび加盟諸国、使用者団体、労働者団体に求められる役割

  • 6月8~11日に結論文書の起草委員会が開催され、12~14日に起草委員会で策定された結論文書案に対する129の修正案に関する討議を行った。
  • 6月17日の委員会において、結論文書案「ディーセント・ワーク、グリーンジョブと持続可能な開発の達成」を採択した。

 

3.連合の主張
  • 連合は、委員会において以下の発言を行い、結論文書への意見反映に努めた。
    • 地球環境の劣化との関連性が指摘される自然災害による被害が拡大している。したがって、防災・減災という観点から、農山漁村の多面的機能の維持・回復や、社会インフラの整備・強化など、災害に強い国土づくりを促進していく必要があり、このことが雇用の維持と創出にもつながる。
    • 地球温暖化防止の観点から、再生可能エネルギーの導入促進、化石燃料の効率的な利活用などに関する最大限の政策導入をはかるとともに、省エネに関する技術革新やライフスタイルの見直しを推進する必要があり、このことが雇用の創出にもつながる。
    • 供給サイドのみならず、需要サイドに対する政策導入も必要である。持続可能な消費に向けた教育政策や消費者政策の促進は、持続可能な社会への転換を促すとともに、関連産業の活性化にもつながる。
    • 持続可能な環境保全に向けた転換に際して、社会対話の推進を前提とする政府としての積極的かつ戦略的な支援が求められる。「公正な移行」を実現する観点から労働者へ適切な配分を実現し、ディーセントなグリーンジョブの維持・創出をはかることが重要である。また、技術移転などの国際協力の促進が不可欠である。
 4.委員会の結論文書(要旨)
  • 結論文書の要旨は以下の通り。
総論
  • グリーン経済への移行は、先進国・途上国双方における成長の新たな原動力や、貧困撲滅及び社会的包摂に相当に寄与する可能性があるディーセントなグリーンジョブの創出源となる潜在力を有する。とりわけ、農業、建設業、リサイクル業、観光業などの部門を中心に、仕事の質を高め、収入を引き上げる可能性を有する。
  • グリーン経済への移行に際し、社会目標の達成に向けた多くの機会を得るためには、世界が協働して環境面及び雇用面の課題に取り組む必要がある。特に、すべての仕事と企業におけるグリーン化のために、社会的対話の推進を前提に、各国のニーズに合わせつつも整合的な政策を採用し、労働基準、産業政策、中小・零細企業への支援に特別の注意を払うことが重要である。
  • また、仕事の世界と教育・訓練の世界との強い結びつき、労働安全衛生関連措置の実行と尊重、健全かつ包括的で持続可能な社会的保護制度の促進などが重要な要素であり、仕事の移動の影響を受ける集団、地域、職業に対象を絞った特別の支援を行う必要がある。
政労使およびILOの役割
  • 政府は、持続可能な企業の構築を可能とするために、インクルーシブな労働市場の確立、社会保護および教育・育成の推進など、持続可能な開発とディーセント・ワークの強化に資する、政策・規定・枠組みを提供すべき。
  • 社会パートナー(労使)は、国家における政策の策定、実施、モニタリングや、労働の移動によってもたらされる機会の評価と課題解決のための社会対話などへ、積極的に参画すべき。
  • ILOは、調査研究能力のさらなる開発、政労使との最善事例の共有、中小企業及び協同組合に対するエネルギー効率の向上や資源のより良い利用による生産工程グリーン化に関する指導の提供をすべき。

 

5.総会本会議での採択
  • 6月19日の総会本会議で開催された全体審議にて、結論文書「ディーセント・ワーク、グリーンジョブと持続可能な開発の達成」が採択された。
  • その際の、政労使代表の発言要旨は以下の通り。
    • 環境の持続可能性、貧困削減、ディーセント・ワークが21世紀の特徴的な課題であるが、最も打撃を受けるのは最貧困層となる場合が多い。これらの課題に対し政労使が協働して同時に取り組むことを求める。(政府代表)
    • 変化は選択肢ではなく必要事項であることを組合員たちは理解している。しかしながら、その変化においては、人間らしく働きがいのあるグリーンジョブを創出する「公正な移行」がなされるべきであり、労働者を調整の変数とすべきではない。(労働者代表)
    • より高いエネルギー効率や資源利用上の環境問題に先行対策的に取り組むことは長期的に持続可能な成長を可能にする助けになる。環境効率による節減が導くコスト節減は技術革新に再投資することができ、企業を強くすると同時により多くの仕事を提供し、企業、労働者、政府を含む経済の全ての当事者に利益をもたらす。(使用者代表)

 

6.総括
  • 本テーマについては、「国連持続可能な開発会議(リオ+20)」や「国連気候変動枠組条約(COP)」などでも議論が行われており、環境的に持続可能な開発を促進し、グリーンジョブを創出するという大きな潮流を、政労使三者構成のもと再確認する形となった。
  • この間、労働側としてILO総会の一般討議に付すことを働きかけて実現した経緯があり、三者構成の中で討議・合意したこと自体に意義があるが、勧告や条約などの基準設定をはじめ、具体的な施策の検討は今後の課題となる。
  • 「ポストミレニアム開発目標(MDGs)」や、「国連気候変動枠組条約(COP)」における2020年以降の温暖化対策の新枠組みの検討・策定などを控える中、国連においては、UNEP(国連環境計画)をはじめとした環境に関する機関と、労働に関する機関であるILOなどが連携・協働し、ディーセント・ワーク、グリーンジョブと持続可能な開発の達成に向けた取り組みを、加速度的かつ一体的に推進していく必要がある。
  • とりわけ、ILOについては、本総会における結論文書を踏まえ、労働の分野においてのイニシアチブを発揮することが求められる。

以 上